前回の検証で、Amazon Q/Kiroが設計の「骨組み」を高速に作れることは確認できました。次に確かめたかったのは、実際のプロダクト運用に耐える詳細設計——DB正規化や非機能要件まで、どこまで網羅できるかです。
結論として、AIが指示なしでは落としがちな必須機能がはっきり特定できました。そして、DB設計をAIに任せる際の工程も定まりました。
この検証の概要
検証時期 | 2025年8月〜9月(8/30〜9/1) |
|---|---|
使用ツール | Amazon Q/Kiro / Cursor(Claude 3.5 Sonnet・Grok-1)/ Supabase / ChatGPT |
やりたかったこと | DB正規化や非機能要件など、運用に耐える詳細設計をAIがどこまで網羅できるか検証する |
特定できた課題 | Kiro単体では「操作ログ」「ログアウト」など運用必須機能が漏れる傾向 |
確立した工程 | DB設計は実装前に「表形式の設計書」としてAIに出力させ、人間が目視チェックする |
判定 | 完了(開発フローの再定義) |
本記事は自社での検証記録です。パフォーマンスの実測値は掲載していません。
結論:AIは「言われなかったこと」を落とす
この検証で最も価値のある発見がこれです。
Kiro単体で設計させると、「操作ログ」「ログアウト機能」「パスワード再設定」といった運用必須機能が漏れる傾向がありました。
これらは、機能要件として明示されることが少ない一方、実運用では必ず必要になるものです。人間のエンジニアであれば経験から補いますが、AIは指示されなければ出力に含めません。
対応として、こうした機能を事前に要件定義書に含めておくプロセスの重要性を確認しました。AIの網羅性に期待するのではなく、落ちやすい項目をこちらから渡す、という考え方です。
裏を返せば、「AIが落としがちな項目リスト」を一度作っておけば、以降の案件で使い回せます。今回の検証は、そのリストの起点になりました。
DB設計の進め方:実装前に表形式で出させる
正規化やインデックス設定といった、DB設計の深い部分をどう扱うか。ここで確立した工程が次のものです。
- 実装前に「表形式の設計書」としてAIに出力させる
- 人間が目視でチェックする
- 問題がなければ実装に進む
いきなりコードを書かせないことがポイントです。DB設計の誤りは、実装が進むほど修正コストが跳ね上がります。表の形で出させれば、正規化の妥当性やインデックスの過不足を短時間で確認できます。
この「設計書を挟む」工程が、今回の結論として最適解でした。
検証の進め方
実際には、次の順で進めています。
- ChatGPTで機能・非機能要件を詳細化し、それをKiroに投入する
- バックエンドをSupabaseに統一し、UUIDによるユーザー管理を実装
- パフォーマンス基準を提示し、実務レベルのレスポンスを要求する
要件定義の段階を別のAIで厚くしてからKiroに渡す、という二段構えです。Kiroに要件定義まで丸ごと任せると、前述の「落ちやすい項目」が漏れます。
実装フェーズ:Kiroのspecsを起点にCursorで対話実装
実装については、前回確立した分担を踏襲しています。
Kiroが生成した specs をベースに、Cursorで「バイブコーディング(対話型実装)」を行う形です。これにより、実装速度を維持しつつ、柔軟な手直しができます。
設計はKiro、実装はCursor、判断は人間。この三層が今回も有効に機能しました。
よくある質問
AIにDB設計を任せて大丈夫ですか?
そのまま実装させるのは避けてください。正規化やインデックス設定といった深い部分は、実装前に表形式の設計書として出力させ、人間が目視でチェックする工程を挟むのが最適解でした。
どんな機能が漏れやすいですか?
今回特定できたのは操作ログ、ログアウト機能、パスワード再設定です。いずれも運用では必須ですが、機能要件として明示されにくいものです。事前に要件定義書へ含めておくことをおすすめします。
Kiroだけで要件定義から実装まで完結しますか?
完結しません。要件定義はChatGPTなどで詳細化してからKiroに投入し、実装はCursorで対話しながら進める、という分担が有効でした。工程ごとに得意なツールを割り当てるほうが結果的に速く進みます。
まとめ
- Kiro単体では「操作ログ」「ログアウト」「パスワード再設定」など運用必須機能が漏れる傾向を特定
- 対策は事前に要件定義書へ含めておくこと。AIの網羅性に期待しない
- DB設計は実装前に「表形式の設計書」として出力させ、人間が目視チェックする工程が最適解
- 要件定義はChatGPTで詳細化 → Kiroに投入 → Cursorで対話実装、という三段構え
- バックエンドはSupabaseに統一し、UUIDでユーザー管理
AIに設計を任せる際は「何を出力させるか」より「何が落ちるか」を把握しているほうが役に立ちます。落ちる項目が分かっていれば、先に渡せば済むからです。
株式会社AI棒では、こうしたAI活用の検証を日々行い、企業の開発内製化とAI導入を支援しています。ご相談はお問い合わせフォームから、継続的な伴走支援についてはAI参謀をご覧ください。
