AIにPowerPointを生成させると、たいてい「AIらしいシンプルなデザイン」に寄ります。情報密度が低く、罫線も注釈もない。コンサルティングファームの資料のような密度には届きません。
この検証では、その原因を「PPTX生成エンジンだけで解こうとしていること」と捉え、画像生成モデルにデザインカンプを先に作らせるという分業を検討しました。
この検証の概要
検証時期 | 2026年5月6日〜(検証中) |
|---|---|
やりたかったこと | 高密度・整った余白・罫線・注釈・チャート表現を持つスライドデザインに近づける |
仮説 | GPT Image 2を「デザインカンプ生成担当」、PowerPoint Agent Skillsを「PPTX実装担当」として分業する |
この時点の成果 | 利用可否・連携ルートの調査整理(実スライド生成PoCは未実施) |
状況 | 進行中 |
本記事は調査・設計段階の記録です。実際のスライド生成と品質評価は未実施のため、成果物の評価は含みません。
結論:画像生成は「完成品」ではなく「視覚的な正解例」を作らせる
この検証で得た最も重要な整理です。
GPT Image 2は「最終成果物」より「視覚的な正解例」を作らせる方が使いやすい。そしてPowerPoint Agent Skillsには、完成画像を読み取って再現する役割を持たせます。
この分業が筋がよい理由は明確です。画像生成モデルは視覚品質に強い一方、編集可能なPPTXオブジェクトを生成することは別問題だからです。それぞれの得意領域に合わせて工程を分けます。
この発想自体は、LP制作で既に使われているものです。「画像生成 → Figma / コード化 → 実装」という流れを、スライド制作に転用するという仮説になります。
最大の検証ポイント:画像から編集可能なPPTXへ戻せるか
分業の構想は立ちますが、そこに1つ難所があります。
GPT Image 2で生成した画像は、そのままでは編集可能なPPTXではありません。画像1枚を貼るだけなら見た目はよくても、あとからテキストや図形を細かく編集できません。
そこで、画像から編集可能なPPTXへ戻すルートを4つ比較する計画を立てています。
ルート | 内容 |
|---|---|
画像1枚貼り | 最短で見た目がよいが、編集性が弱い |
Figma / Canva経由 | 取り込んでPPTX exportする |
Vision解析 → 再構成 | 画像を解析し、テキストボックス・図形・罫線・チャート風オブジェクトへ再構成 |
SVG中間表現 → ネイティブPPTX | 画像を直接変換せず、中間表現を経由する |
評価軸も先に固定しています。見た目の再現度/テキストの編集可能性/図形・矢印・罫線の編集可能性/フォント・色・余白の維持/PowerPointで開いたときの崩れ/修正指示への耐性/1枚あたりの工数/クライアント環境で使えるか。
比較する前に評価軸を決めておくと、印象論での判断を避けられます。
ハイブリッド運用という現実解
全ページを編集可能にする必要はない、という整理も出ています。
重要ページのみ画像1枚、本文ページはPPTXオブジェクト——というハイブリッド構成です。
表紙・章扉・キースライドは見た目が効きます。一方、本文ページは修正が入る前提なので編集可能である必要があります。用途に応じて作り方を変えるほうが、全体としての工数は下がります。
日本語テキストの扱い
実務的な注意点です。
日本語テキストを含む場合は、画像生成時の文字崩れを考慮し、最終テキストはPPTX側で差し替える前提がよい。
画像生成モデルは日本語の文字を正確に描けないことがあります。デザインの型は画像から取り、文字は後から載せ直すという運用が安全です。
プロンプトは「雰囲気」だけでは足りない
もう1つの実装上の知見です。
「consulting slide」「Big Four style」のような雰囲気指定だけでなく、16:9、余白、罫線、凡例、脚注、ページ番号、出典、タイトルの粒度まで指定する必要があります。
高密度な資料が高密度に見えるのは、要素が多いからではありません。脚注・出典・凡例といった細部が揃っているからです。これらを明示的に指定しないと、雰囲気だけ似た薄い出力になります。
ツール利用上の制約
調査で判明した点です。
- Codex内蔵の画像生成ツールでは、モデル名を直接指定できない(
gpt-image-2を明示指定できない) - OpenAI API経由なら
gpt-image-2を使った画像生成・編集の実装は可能 - 実運用ではChatGPTのブラウザ画面から呼び出す方向が現実的と判断
- Figma SlidesのPPTX exportにはフォント置換、インタラクションの静止化、グラデーションの変換などの制限がある
「APIにモデルがある」ことと「使いたいツールから呼べる」ことは別です。組み込み前に確認が必要になります。
PoCの進め方
まず1枚スライド単位で検証する方針です。対象は型が明確な3種類に絞っています。
- 比較表
- 2軸ポジショニングマップ
- ロードマップ
理由は「型が明確なスライドで品質差を見やすいため」です。自由度の高いスライドで比べると、何が効いたのか分からなくなります。
入力画像も1枚に固定して比較します。変数を減らしてから比べるという基本的な設計です。
クライアント環境という評価軸
この検証には、技術以外の観点も入っています。
Figmaが使えないクライアント向けには、別のルートを現実解として試すという判断です。制作側で最高精度が出るルートと、相手先で運用できるルートは別になります。
ツール選定に「相手が使えるか」を評価軸として入れておくと、納品後に困りません。
よくある質問
なぜ画像生成を経由するのですか?
PPTX生成エンジン単体では、AIらしいシンプルなデザインに寄りやすいためです。画像生成モデルは視覚品質に強いので、先に「視覚的な正解例」を作らせ、それを実装工程で再現する分業が有効と考えています。
生成した画像はそのまま使えますか?
編集可能なPPTXにはなりません。画像1枚を貼る運用は見た目はよいものの、テキストや図形の編集ができません。重要ページのみ画像、本文ページはPPTXオブジェクトというハイブリッドが現実的です。
日本語の文字はきれいに出ますか?
崩れることがあります。最終テキストはPPTX側で編集可能テキストとして載せ直す前提にしておくのが安全です。
プロンプトのコツは?
雰囲気の指定だけでは足りません。16:9、余白、罫線、凡例、脚注、ページ番号、出典、タイトルの粒度まで具体的に指定する必要があります。
まとめ
- AIらしいスライドになる原因はPPTX生成エンジンだけで解こうとしていること
- 解決策は画像生成モデルに「視覚的な正解例」を作らせ、実装は別工程に分ける分業
- 最大の検証ポイントは画像から編集可能なPPTXへ戻す工程。4ルートを固定した評価軸で比較する
- 重要ページのみ画像、本文ページはPPTXオブジェクトというハイブリッドが現実解
- 日本語は画像側で崩れる前提。最終テキストはPPTX側で載せ直す
- プロンプトは雰囲気ではなく、余白・罫線・凡例・脚注・出典まで具体的に指定する
- ツール選定には「相手先の環境で使えるか」も評価軸に入れる
AIに任せる工程を分けると、それぞれの得意領域を活かせます。1つのツールで完結させようとすると、どこかで品質が頭打ちになります。
株式会社AI棒では、こうしたAI活用の検証を日々行い、企業の資料作成業務へのAI導入を支援しています。ご相談はお問い合わせフォームから、継続的な伴走支援についてはAI参謀をご覧ください。
