予約管理画面から予約状況や売上を毎日手で拾って集計する——現場からの「これを自動化したい」という声は非常に強いものでした。技術的には十分に実現可能です。実際、動的サイトを操作して情報を取得するところまでは動きました。
それでも、この検証は実用化せずに中断しました。理由は技術ではなく、利用規約です。判断に至った過程を記録として残します。
この検証の概要
検証時期 | 2025年7月〜8月(7/26〜8/1) |
|---|---|
使用ツール | Claude Desktop / Playwright MCP |
やりたかったこと | 予約管理プラットフォームの管理画面から、予約・売上情報を自動取得して集計する |
技術的な結果 | Playwright MCPにより動的サイトの操作が可能であることを確認 |
結論 | 利用規約のスクレイピング禁止条項に抵触するため中断。積極的な推奨は避けるべきと判断 |
代替方針 | 公式APIの有無を再確認する。無い場合はブラウザ操作を支援する「半自動化」に留める |
本記事は自社での検証記録です。実運用は行っていないため、工数削減などの数値はありません。技術的な実装手順も、規約上の理由から掲載していません。
結論:技術的な「可能」と、ビジネス上の「許可」は別物
この検証で最も大きな学びがこれです。
AIとブラウザ自動化ツールを組み合わせれば、ログインが必要な動的サイトからでも情報は取得できます。技術的なハードルは、以前と比べて大きく下がりました。「できるかどうか」で判断するなら、答えは「できる」です。
しかし実務では、その手前に確認すべきことがあります。そのサイトの利用規約が、機械的な情報取得を許可しているかどうかです。
今回対象としたプラットフォームの約款には、スクレイピングを禁止する条項(第14条10項)が置かれていました。この時点で、技術的な検証結果がどうであれ、実用化の選択肢は消えます。
なぜ「グレーゾーンだから様子見」にしなかったか
規約違反のリスクを承知の上で運用する、という判断もあり得ます。今回それを採らなかったのは、大手プラットフォームの規約は厳格に運用されており、抵触した場合の社会的リスクが高いと評価したためです。
利用規約と、過去の法的措置の事例をあわせて調査した結果、積極的な推奨は避けるべきという結論に至りました。アカウント停止にとどまらず、事業上の信用に関わる可能性を考えると、削減できる工数と釣り合いません。
自動化の検討では「できるか」を先に確かめたくなりますが、規約の確認を先に置いたほうが、結果的に無駄が減ります。今回は技術検証を進めた後に規約を精査したため、動くところまで作ってから止める形になりました。
技術的に確認できたこと
実用化はしませんでしたが、技術検証としての収穫はありました。
Playwright MCPを使うことで、動的サイトの操作がAI経由で可能であることを確認しました。JavaScriptで描画されるページや、ログインが必要な画面でも、ブラウザを実際に動かす方式であれば扱えます。
この技術自体は、規約上問題のない対象——たとえば自社が管理するシステムや、自動取得が許可されているサイト——に対してであれば、有効な選択肢になります。技術に問題があるわけではなく、適用先を選ぶ必要があるということです。
では、どうするか
現場のニーズ自体は消えません。中断後の方針として、次の順で検討することにしました。
- 公式APIの有無を再確認する — 提供されていれば、規約上も安全で保守性も高い。まずここを潰す
- 「半自動化」に留める — 全自動を諦め、人がブラウザを操作する作業を支援する範囲に絞る。ログイン後の画面遷移を補助する、取得したデータの整形だけを自動化する、といった形
全自動でなくても、工数は下がります。「規約に触れない範囲でどこまで楽にできるか」に発想を切り替えるほうが、結果的に長く使える仕組みになります。
よくある質問
スクレイピングは違法なのですか?
スクレイピングという行為が一律に違法というわけではありません。問題になるのは、対象サイトの利用規約で禁止されている場合や、取得方法・利用目的が法令に触れる場合です。今回は対象プラットフォームの約款に明確な禁止条項があったため、実用化を断念しました。判断は対象ごとに変わります。
技術的な実装方法を知りたいのですが
本記事では実装手順を掲載していません。規約で禁止されている対象への適用を助長しかねないためです。規約上問題のない対象に対してブラウザ自動化を検討されている場合は、個別にご相談ください。
公式APIが無い場合はどうすればいいですか?
全自動を諦め、人の操作を支援する「半自動化」に留めるのが現実的です。データの整形や集計だけを自動化するだけでも、日々の工数は下がります。規約に触れない範囲を先に確認してから、自動化の範囲を決めてください。
まとめ
- Playwright MCPにより動的サイトの操作は技術的に可能だと確認できた
- しかし対象プラットフォームの約款にスクレイピング禁止条項があり、実用化を断念
- 技術的な「可能」とビジネス上の「許可」は別物。大手の規約は厳格で、抵触時の社会的リスクが高い
- 代替として、公式APIの確認を優先し、無ければ「半自動化」に留める方針とした
- 自動化の検討では、技術検証より先に規約の確認を置いたほうが無駄が少ない
AI活用の相談では「技術的にできるか」が話題になりがちですが、実務で効いてくるのは「やっていいか」の確認です。今回はそれを痛感した検証でした。
株式会社AI棒では、こうしたAI活用の検証を日々行い、企業の業務自動化を支援しています。規約やリスクを踏まえた実現可能性のご相談はお問い合わせフォームから、継続的な伴走支援についてはAI参謀をご覧ください。
