「こっちのほうが速い気がする」——体感は当てにならないことも多いですが、確かめる価値はあります。
この検証では、同一のLPを2つのホスティング基盤で公開し、実測で比較しました。結果、体感は数値で裏づけられましたが、総合スコアだけを見ると逆の結論になるという落とし穴もありました。
この検証の概要
検証日 | 2026年6月8日 |
|---|---|
対象 | Vercel / Cloudflare Pages(同一LPを2環境で公開) |
計測 | PageSpeed Insights(Lighthouse 13.3.0)でモバイル・デスクトップ両方 |
結果 | FCP・Speed Index・TBTは全条件でCloudflareが速い |
状況 | 完了 |
結論:初回描画はCloudflareが一貫して速い
モバイル(低速4G相当)
指標 | Vercel | Cloudflare | 速い方 |
|---|---|---|---|
パフォーマンス総合 | 99 | 75 | Vercel |
FCP | 1.1秒 | 0.9秒 | Cloudflare |
Speed Index | 2.7秒 | 1.1秒 | Cloudflare |
TBT | 70ms | 40ms | Cloudflare |
LCP | 1.7秒 | 9.9秒 | Vercel |
デスクトップ
指標 | Vercel | Cloudflare | 速い方 |
|---|---|---|---|
パフォーマンス総合 | 85 | 93 | Cloudflare |
FCP | 0.5秒 | 0.2秒 | Cloudflare |
Speed Index | 1.1秒 | 0.5秒 | Cloudflare |
TBT | 130ms | 0ms | Cloudflare |
LCP | 2.4秒 | 1.8秒 | Cloudflare |
なお、ユーザー補助(93)・おすすめの方法(100)・SEO(100)は全条件で両環境同値でした。差はパフォーマンス領域に限定されます。
総合スコアだけを見てはいけない
この検証で最も重要な指摘です。
モバイルの総合スコアだけ Vercel 99 / Cloudflare 75 と逆転しています。しかし内訳を見ると、FCP・Speed Index・TBTはすべてCloudflareが速い。
逆転の要因は1つです。Cloudflare側モバイルLCPの単発値 9.9秒。
ここで冷静に見るべき点があります。同一画像でデスクトップは1.8秒、Vercelのモバイルでも1.7秒です。9.9秒という値だけが突出しています。
初回アクセス時のキャッシュ未ウォームや計測変動の影響が大きいと考えられ、プラットフォームの実力差ではない可能性が高いという判断になります。
1つの数値が総合スコアを大きく動かすことがあります。スコアだけで判断すると、内訳と逆の結論に至ります。
なぜCloudflareのほうが初回描画が速いのか
理由はネットワーク構成にあります。
観点 | Cloudflare | Vercel |
|---|---|---|
エッジ拠点(PoP) | 337都市・100カ国以上 | 126 PoP / コンピュート20リージョン |
配信方式 | 全拠点同一IPのAnycast(自動で最寄り誘導) | PoP → 最寄りリージョンへルーティング |
エッジ実行 | V8 isolates(コールドスタート5ms未満) | サーバーレス基盤 / Edge Runtime |
PoP数が約2.5〜3倍あり、Anycastでユーザーへの物理距離(RTT)が短くなります。そのためTTFB・初回描画が小さくなります。
重要なのは、この差は日本・東南アジアなど、北米/西欧の外側ほど開きやすいという点です。
海外のベンチマーク記事の結果が、日本からのアクセスでそのまま当てはまるとは限りません。
用途で分ける
2026年時点での住み分けは明確です。
用途 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
静的サイト・LP配信 | Cloudflare | PoP数とAnycastで初回描画が速い |
重い動的処理・SSR | Vercel | 計算量の多い処理で有利 |
「静的=Cloudflare/動的SSR=Vercel」という整理です。
なお、動的処理の性能差については提供元の自社ベンチマークの数値がありますが、中立性には留保が必要という但し書きも記録されています。
よくある誤解の訂正
この検証では、事実確認の記録も残されています。
「CloudflareとGoogleの資本提携」は誤解されやすい——という点です。
2015年にGoogle系の投資部門が出資したのは事実ですが、Cloudflareは2019年にNYSE上場した独立企業です。現在Google傘下でも資本提携でもありません。現存するのはGoogle Cloudとの技術提携程度です。
速度の源泉はGoogleに由来しません。自前の337都市Anycastネットワークと独自ランタイムによるものです。
技術選定の理由を顧客に説明するとき、誤った前提を伝えないための確認として重要な記録です。
計測方法のTips
実務的な工夫も記録されています。
PageSpeedの解析ページはスコアをJavaScriptで動的描画するため、通常のHTTP取得では取れません。
対処として、ブラウザ自動化ツールで open → eval "document.body.innerText" によりスコアを抽出しました。
JSで描画されるページからデータを取る場合、ブラウザを動かす必要があります。
計測上の留意点
- ラボデータは単一実行の推定値で、実行ごとに変動する
- 単一実行値での結論は避け、複数回計測が望ましい
- この検証では両環境とも画像が非WebP等で、約1,618 KiBの削減余地があった
最後の項目は重要です。ホスティングを比較する前に、コンテンツ側の改善余地が残っていました。基盤を変えるより、画像を最適化するほうが効果が大きいケースもあります。
よくある質問
どちらが速いですか?
初回描画(FCP・Speed Index・TBT)は全条件でCloudflareが速いという結果でした。ただしモバイルの総合スコアだけは逆転しており、これはLCPの単発値が支配的な要因です。
総合スコアで判断してよいですか?
内訳の確認が必要です。この検証では、1つの指標の単発値が総合スコアを大きく動かし、内訳と逆の結論になりました。
海外のベンチマーク結果は参考になりますか?
そのまま当てはまらない場合があります。PoP数の差による効果は、北米・西欧の外側ほど大きくなります。日本からのアクセスで測る価値があります。
Cloudflareが速いのはGoogleとの関係ですか?
違います。Cloudflareは2019年に上場した独立企業で、Google傘下でも資本提携でもありません。速度は自前の337都市Anycastネットワークと独自ランタイムによるものです。
まとめ
- 初回描画(FCP・Speed Index・TBT)は全条件でCloudflareが速い
- モバイル総合スコアだけ逆転。ただし要因はLCPの単発値で、実力差ではない可能性が高い
- 総合スコアだけを見ると内訳と逆の結論になる。必ず内訳を確認する
- 速度差の源泉はPoP数(約2.5〜3倍)とAnycast構成。北米・西欧の外側ほど差が開く
- 2026年時点の住み分けは「静的=Cloudflare/動的SSR=Vercel」
- ラボデータは変動するため複数回計測が望ましい
- 基盤を変える前に、画像最適化などコンテンツ側の改善余地を確認する
技術選定の根拠は、体感でも一般論でもなく実測で持つと説明しやすくなります。ただしスコアの見方を誤ると、数値があっても判断を間違えます。
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