「こういう感じのサイトにしたい」という漠然としたイメージを、動くプロトタイプにするまでには通常いくつもの工程があります。
この検証では、リリース当日にClaude Design Toolを触り、サイトリデザインの素案づくりから慣性スクロール・パララックスの調整までを実際に回しました。結論を先に書くと、V0の代替としては十分。ただし出力コードはそのまま本番投入できません。
この検証の概要
検証日 | 2026年4月16日(リリース当日に検証) |
|---|---|
対象 | Claude Design Tool(Anthropic リリース、2026/04/16) |
検証内容 | AIによるUIデザイン・プロトタイプ生成の実用性/既存デザインツールの代替可能性 |
出力形式 | HTML / JSX(コンポーネント分割あり) |
生成量 | ヒーローレイアウト5種 × カラースキーム5種=25通りを一度に生成 |
状況 | 完了 |
結論:60点のプロトタイプを最速で出せる
評価を一言でまとめるとこうなります。
60点クオリティのプロトタイプをかなりのスピードで生成できます。
この「60点」という表現は否定ではありません。素案の段階で必要なのは100点ではなく、判断できる形になっていることです。ここが速く出るなら、その後の議論が前に進みます。
ツール | 位置づけ |
|---|---|
V0 | ほぼ不要になる。ClaudeのUIプロト生成で代替可能 |
Figma | ハイクオリティ仕上げ・デザインシステム管理には引き続き必要 |
Claude Design | プロトタイプ・素案・PoC用途で最速 |
最初のターン:25通りを一度に出してきた
投げたプロンプトは次のような短いものです。
こちらのサイトのデザインを刷新したいです、アイデア出してサンプル作りたいです。
Hi-fi design
Interactive prototypeこれに対しClaudeが方向性を決めるための質問を投げ、こちらが一括で回答しました。トーン(洗練・ミニマル)、カラー方向性(全く新しい配色)、ターゲット(企業)、ヒーロースタイル(アニメーションのあるヒーロー)、レイアウト(シングルページ)、バリエーション数(5パターン以上)といった項目です。
生成されたのは以下です。
ヒーローレイアウト5種(Tweaksパネルで切り替え可能)
- A: 左寄せテキスト + 浮遊ジオメトリックシェイプ
- B: 中央配置 + タイピングアニメーション
- C: 左右分割 + モザイクグリッド
- D: 超大型タイポグラフィ + アクセントライン
- E: ミニマル縦ライン + スタッツカード
カラースキーム5種:Slate × Sienna(琥珀系)/Mono × Indigo/Navy × Terracotta/Graphite × Blue/Warm × Olive
気づいた点は3つあります。
- 「Hi-fi design / Interactive prototype」というキーワードだけで、質の高いプロトタイプを前提に動いてくれた
- 質問→一括回答という形式でも、全項目を正確に解釈して実行プランを自律的に組み立てた
- 5レイアウト×5カラーの25通りを一度に生成する実行力はV0と比べて段違い
自律的なデバッグ:3回リライトしてフォールバックを選んだ
この検証で最も興味深かった挙動です。こちらが何も指示していないターンで、Claudeが自律的にアニメーション実装の問題を検知し、複数回リライトを行いました。
- 第1試行: JSステートベースのエントランスエフェクト実装 → Babel環境でJSステートが動作しないことが判明
- 第2試行: CSSクラスベース(
loadedクラストグル方式)への書き換え → 同様に動作せず - 第3試行: pure CSS
animation-delay方式に完全書き換え → スクリーンショット検証で動作確認できず - 最終解: ヒーローコンテンツをデフォルト表示(
opacity: 1)にし、CSSアニメーションはプログレッシブエンハンスメントとして残す
ここから2つのことが分かります。
ひとつは、検証環境の制約を認識したうえで、動く形に着地させる判断ができていること。「アニメーションは通常ブラウザでは動くが、検証環境のスクリーンショットでは動かない」という状況で、コンテンツが確実に表示されることを優先しました。フォールバック設計としては適切です。
もうひとつは構成の推測です。スクリーンショット検証を担う内部エージェントの存在が確認でき、Claude Design Toolが単体のLLMではなくエージェント構成になっていることが示唆されました。
対話で詰めていく体験
この検証の後半は、慣性スクロールとパララックスの調整に費やしています。実際のやり取りは次のようなものでした。
「簡単で良いので」から適切な実装を選ぶ
「慣性スクロールとりいれれますか? 簡単で良いのでFVあたりにパララックスの要素を入れてみたいです」という抽象的な指示に対し、lerpベースの慣性スクロールドライバーを useParallax() フックとして切り出し、パララックス速度を3段階(slow / mid / fast)で実装してきました。
lerpという実装手法を明示していないのに選択してきた点は、実装レベルの判断ができていることを示します。
問題報告に対して根本から変えてくる
「パララックスの表示がカード形式の要素と重なっててわかりにくい」という報告に対する対応が印象的でした。
位置を動かすだけでなく、デコレーション形状をカード風のボックスから radial-gradient の大型ソフトグロー(300〜450px)に変更し、画面端に配置して重なりを解消しています。
「重なる」という問題に対して、形そのものを変えるという解き方を自律的に選んでいます。
矛盾して見える要件を正しく分解する
「もっとヘビーにしてスクロールしても今より動きの量を抑えたい」——一見すると矛盾する指示です。
これに対し、lerp係数を0.025まで下げて停止後の余韻を強調(重い追従感)しつつ、パララックス移動量は約4割減という対応をしました。
慣性の重さとパララックス移動量は独立したパラメータであると正しく解釈しています。
短い指示でも文脈を保つ
「円形グロー 開始位置をもう少し下にして」という1行の指示に対し、各ヒーローの円形グローの top 値を15〜20%付近に調整。前のターンで左側に配置した円形グローのことだと文脈を維持できています。
また「パララックス移動量 もっと増やして」では、抑えた値から約2倍に拡大(slow: -0.55 / mid: -0.35 / fast: 0.45)。数値の履歴を保持してスケール感を維持していました。
課題:コードがベタ書きで出力される
実用面での最大の課題です。
単一HTMLやJSXのベタ書きコードが出力されます。コンポーネント分割・モジュール化の設計がなく、そのままサーバーにデプロイするには手が必要です。
本番投入前に構造整理・リファクタリングが必要になります。「動くものが出てくる」ことと「そのまま使える」ことは別という整理です。
もうひとつの課題は仕上がりです。高品質なデザインシステム・ブランドガイドラインとの整合には人手が必要で、デザイナーが「最初に出てきたものを調整する」フェーズは残ります。
デザイナーとノンデザイナー、それぞれへの示唆
デザイナーの仕事はどう変わるか
- Figma/Adobe XDでポチポチ作る作業フェーズは縮小していく
- 「AIにどう指示してデザインを仕上げるか」のプロンプト設計・仕組み整備が主業務になる
- AIの出力を評価・修正できる「デザインの目」は引き続き必要
ノンデザイナー・PMは何を知っておくべきか
- デザイン専門知識は不要になるが、「良いデザインかどうかの判断軸」は必要
- エンジニアも含め、デザイントレンドの概要把握(ベントーデザイン、慣性スクロール、パララックス速度感など)が求められる
- 専門用語を知らなくても「なんとなくのイメージを言語化できる」レベルで十分
この検証のやり取りがそれを示しています。「もっとヘビーに」「左側に配置して」といった自然言語でUIを詰められました。
よくある質問
V0の代わりになりますか?
なります。この検証では5レイアウト×5カラーの25通りを一度に生成しており、実行力の差は大きいと評価しています。
Figmaは不要になりますか?
なりません。ハイクオリティな仕上げとデザインシステムの管理には引き続き必要です。Claude Designはプロトタイプ・素案・PoC用途で最速という位置づけです。
出力されたコードはそのまま使えますか?
そのままでは使えません。単一HTMLやJSXのベタ書きで出力され、コンポーネント分割・モジュール化の設計がありません。本番投入前に構造整理・リファクタリングが必要です。
デザインの専門知識は必要ですか?
専門用語は不要ですが、良し悪しの判断軸は必要です。「なんとなくのイメージを言語化できる」レベルで十分に調整できます。ただし出てきたものを評価できないと、仕上がりは上がりません。
まとめ
- 60点クオリティのプロトタイプを高速で生成できる。素案段階なら十分な水準
- 短いプロンプトから5レイアウト×5カラーの25通りを一度に生成。実行力はV0と比べて段違い
- 指示していないターンでも自律的に問題を検知し、3回リライトしてフォールバック設計に着地した
- 「もっとヘビーに」「左側に配置して」といった自然言語でUIを詰められる対話体験。矛盾して見える要件も正しく分解する
- 課題はコードがベタ書きで出力されること。本番投入にはリファクタリングが必要
- デザイナーの仕事は作業から「AIへの指示設計」と「出力の評価」へ移る
プロトタイプが速く出ると、議論の起点が「言葉」から「実物」に変わります。専門知識がなくても形にできるようになると、決められる人の範囲が広がります。
株式会社AI棒では、こうしたAI活用の検証を日々行い、企業の制作業務へのAI導入を支援しています。ご相談はお問い合わせフォームから、継続的な伴走支援についてはAI参謀をご覧ください。
