RAG(検索拡張生成)の構築は、大掛かりな作業だと思われがちです。ベクトルデータベースを用意して、埋め込みを作って、検索と生成を繋いで——という手順を想像すると、着手のハードルが上がります。
Gemini APIのFile Searchツールを使えば、この工程が大幅に省けます。実際に試したところ、約50行程度のコードで、独自ソースに基づく回答生成が実装できました。
この検証の概要
検証時期 | 2025年11月(11/1〜11/7) |
|---|---|
使用ツール | Gemini API(File Search Tool)/ JavaScript(Node.js) |
やりたかったこと | 大量の独自ドキュメントを参照するRAG環境を、Vertex AI等の複雑な基盤なしにAPIのみで構築できるか |
結果 | 約50行程度のコードでRAGの実装が完了 |
評価 | 非エンジニアには難易度が高いが、エンジニアにとってはモック環境や小規模アプリへのRAG実装として極めてコスパが高い |
判定 | 完了(小規模アプリ向け実装パターン確立) |
本記事は自社での検証記録です。回答精度の数値評価や、大規模データでの性能測定は行っていないため、その数値は掲載していません。
結論:50行でRAGが動く
この検証で確認できた最も端的な事実がこれです。
約50行程度のコードで、独自ソースに基づく回答生成(RAG)を実装完了しました。
従来、RAGを自前で組もうとすると、ベクトルDBの選定と構築、埋め込みモデルの選択、チャンク分割の調整といった判断が次々に発生します。Vertex AIのような基盤を使えば整理されますが、それはそれで学習コストがかかります。
File Searchツールは、この一連の工程をAPI側に寄せてくれます。ファイルをアップロードし、ストアを構築し、問い合わせる。この3ステップだけです。
実装の流れ
1. ファイルをアップロード
↓
2. ストアを構築
↓
3. API に問い合わせ → 独自ソースに基づく回答この検証ではJavaScript(Node.js)で実装しました。ベクトルDBの用意も、埋め込みの管理も不要です。
向いている用途 / 向かない用途
評価 | |
|---|---|
モック環境 | 極めてコスパが高い。すぐ動かせる |
小規模アプリへのRAG実装 | 同上。基盤構築のコストを払わずに済む |
非エンジニアの利用 | 難易度が高い。コードを書く前提 |
「RAGを試したいが、基盤構築から始める余裕はない」という状況に最も噛み合います。まず動くものを作って価値を確認し、必要なら後から本格的な基盤に移す、という進め方が取りやすくなります。
非エンジニアには向かない
正直に書いておくと、非エンジニアには難易度が高いという評価です。APIを叩くコードを書く必要があるため、ノーコードで完結するものではありません。
社内のナレッジ活用を非エンジニアだけで進めたい場合は、NotebookLMのようなツールのほうが噛み合います。誰が使うのかで、選ぶべき手段は変わります。
よくある質問
ベクトルデータベースは不要ですか?
不要です。File Searchツールがファイルのアップロードからストア構築までを担うため、自前でベクトルDBを用意する必要がありません。
Vertex AIとどちらを使うべきですか?
規模と目的によります。モック環境や小規模アプリであれば、File Searchツールのほうが圧倒的に速く着手できます。大規模な本番運用では、基盤側の機能が必要になる場面が出てくると考えられます。
非エンジニアでも使えますか?
難易度が高いです。APIを叩くコードを書く前提のため、ノーコードで完結しません。非エンジニア中心で進めるなら、NotebookLMなど別の選択肢を検討してください。
大量のドキュメントでも動きますか?
この検証では大規模データでの性能測定は行っていません。「小規模アプリ向けの実装パターン確立」という位置づけです。
まとめ
- Gemini APIのFile Searchツールで、約50行程度のコードでRAGを実装できた
- ベクトルDBの構築や埋め込みの管理といった基盤構築の工程が不要
- モック環境や小規模アプリへのRAG実装としてコスパが極めて高い
- ただし非エンジニアには難易度が高い。コードを書く前提の手段
RAGは「大掛かりなもの」という印象がありますが、規模を絞れば短時間で動かせます。まず小さく作って価値を確認する、という進め方が取りやすくなりました。
株式会社AI棒では、こうしたAI活用の検証を日々行い、企業のナレッジ活用とAI導入を支援しています。ご相談はお問い合わせフォームから、継続的な伴走支援についてはAI参謀をご覧ください。
