会議の文字起こしをAIに任せると、多くの場合勝手に要約されます。「議事録を作って」と頼んでいないのに、話し言葉が書き言葉に整えられ、構成案まで付いてくる。
この検証では、その挙動を抑えて忠実な文字起こしを得るためのプロンプト設計と運用を整理しました。
この検証の概要
作成日 | 2026年5月9日 |
|---|---|
対象 | Geminiによる音声・動画の文字起こし運用 |
やりたかったこと | 要約されず、話し言葉のまま忠実に文字起こしさせる |
成果 | ファイル前処理・プロンプト設計・ワークフローの運用Tipsを整理 |
結論:AIは放っておくと「整えて」しまう
文字起こしで最も重要なのは、やってほしくないことを明示することです。
プロンプトに入れるべき条件は3つあります。
- 「要約・構成案を作らない/忠実に文字起こしする」を明示
- 書き言葉化を防ぐため「話し言葉維持・サンプル口調を継承」の条件を追加
- フィラーは除去するが内容改変はしない、というバランスを指示で固定
3つ目が微妙な調整です。「えーと」のようなフィラーは消してほしいが、言い回しは変えてほしくない——この線引きを指示で固定しておかないと、出力のたびに整えられ方が変わります。
話し言葉のまま残すことには意味があります。誰がどう言ったかのニュアンスは、書き言葉に整えた時点で失われます。
マルチモーダルで音声・動画を直接扱える
ツール選定の観点です。
Geminiはマルチモーダルで音声・動画を直接解析できます。他のモデルでは音声の直接処理に制約がある場合があり、この点が使い分けの理由になります。
ファイル前処理でつまずかない
地味ですが実務で効く知見です。
問題 | 対処 |
|---|---|
MP4で読込エラーになる | VLCでMP3に変換してからアップロードすると安定(データ構造起因のエラーを回避) |
大きなファイルが通らない | モデルによりファイルサイズ上限が異なる(256MB / 512MB) |
「対応形式のはずなのに読み込めない」場合、コンテナ形式の問題であることがあります。音声だけを取り出した形式に変換すると通ることが多くなります。
一発出力を狙わない
ワークフロー設計の結論です。
文字起こし → チャプター見出し付与 → 人間レビュー一発出力を狙わず、この反復のほうが安定します。
文字起こしと構成付けを同時に指示すると、構成を作るために内容が整理されてしまいます。工程を分けることで、それぞれの目的を保てます。
指示は「プロジェクト機能」に保存する
運用方法についての判断です。
入力が毎回変わる用途では、固定のカスタムGPTを作るより、Geminiの「プロジェクト機能」に指示プロンプトを保存する方が運用しやすい。
理由がもう1つあります。履歴が貯まるとAI側がパターンを掴みやすくなるため、同一プロジェクトを継続して使うほうが有効です。
毎回まっさらな状態から始めるより、これまでのやり取りが残っている場所で続けるほうが、指示が短くて済むようになります。
編集はデスクトップ版で行う
将来の効率化方針として挙げられている点です。
ブラウザ版より、デスクトップのコーディングツールで .md を原文保持しつつ上書き編集する方が、予測変換による劣化を回避できる。
文字起こしの後工程で編集を加えるとき、入力補助が働くと原文が意図せず変わることがあります。テキストファイルとして扱えば、変更箇所を差分で確認できます。
よくある質問
なぜ勝手に要約されるのですか?
指示がないと「読みやすく整える」方向に振れるためです。「要約・構成案を作らない/忠実に文字起こしする」を明示的に指定する必要があります。
話し言葉のまま残すには?
「話し言葉維持・サンプル口調を継承」という条件を追加します。あわせて、フィラーは除去するが内容は改変しない、というバランスを指示で固定します。
MP4が読み込めません
MP3に変換してからアップロードすると安定します。データ構造に起因するエラーを回避できます。ファイルサイズ上限(モデルにより256MB / 512MB)にも注意してください。
毎回同じ指示を書くのが面倒です
プロジェクト機能に指示プロンプトを保存し、同一プロジェクトを継続して使ってください。履歴が貯まるとパターンを掴みやすくなり、指示が短くて済むようになります。
まとめ
- 文字起こしでは「要約しない・構成案を作らない」を明示することが最重要
- 話し言葉を維持し、フィラーだけ除去するという線引きを指示で固定する
- MP4が読み込めない場合はMP3に変換すると安定する
- 一発出力を狙わず「文字起こし → 見出し付与 → レビュー」の反復にする
- 指示はプロジェクト機能に保存し、同一プロジェクトを継続して使う
- 後工程の編集はデスクトップツールで原文保持しながら行うと劣化を避けられる
AIへの指示は、してほしいことより「してほしくないこと」のほうが効きます。特に文字起こしのような「原文を保つ」作業では、この指定が品質を決めます。
株式会社AI棒では、こうしたAI活用の検証を日々行い、企業の議事録・ナレッジ整備へのAI活用を支援しています。ご相談はお問い合わせフォームから、継続的な伴走支援についてはAI参謀をご覧ください。
